2021年 世界青少年技能デー:コロナ禍による子どもと若者への長期的な影響としてメンタルヘルスと健康の悪化が指摘されている
イプソスが実施した新しい調査によると、29カ国の10人に4人(世界平均では37%)が、子どもや若者のメンタルヘルスやウェルビーイングの悪化がコロナ禍による長期的な影響になると考えていることがわかりました。
この世論調査は、2021年の「世界青少年技能デー」を記念して実施されたもので、29カ国の16~74歳の成人を対象に、新型コロナウイルスに対する一般の人々の意識や、子どもの教育、ウェルビーイング、技能開発への影響を調査しています。
学業への集中力を維持することは、あらゆる年齢層の子どもや若者が学校に戻る際に直面する最大の問題であると考えられている
調査対象者には、学校が閉鎖された子どもたちや若者が対面式の教育に戻る際に、彼らのウェルビーイングに最も大きな影響を与えると思われる問題を3つまで選んでもらいました。
- 平均して10人に4人が、学校に復帰する17歳までの子どもと若者が直面する最大の問題は、学業への集中力の維持だと考えています。
- 29カ国の平均で約3分の1が「学校環境の変化に適応すること」と「他の生徒、教師、スタッフとの関係を取り戻すこと」が11歳以下の子どもたちが直面する最大の問題になると考えています(世界各国の平均でそれぞれ32%と31%)。一方、12歳~15歳の子どもたちにとっては、良い行動や規律を維持することがより大きな問題になると予想されます(世界各国の平均で32%)。
パンデミックの影響で、子どもや若者のメンタルヘルスやウェルビーイングが悪化することは、長期的には避けられないと考えられている
- 調査実施国の多くでは、パンデミックの長期的な影響として、メンタルヘルスとウェルビーイングの悪化が挙げられており、29カ国の平均では10人に4人(37%)が、子どもと若者の長期的な影響として挙げています。メンタルヘルスとウェルビーイングについては、スウェーデン(対象者の51%)、カナダ(50%)、チリ(46%)で最も多く挙げられ、メキシコ(23%)とサウジアラビア(19%)では最も少ない結果となりました。
- 一方、29カ国の平均では、3分の1以上(35%)が、子供たちが正規の教育を受けられなかった分を補うことができず、結果的に資格が低下すると考えています。また10人に3人(30%)が、子どもや若者が将来的に失業率の上昇や収入減に直面すると考えています。これら2つの問題は関連性がありそうです。教育を受けられないことや資格の低下への懸念は、韓国(55%)とマレーシア(51%)で最も高く、オーストラリア(19%)で最も低くなっています。失業率の高さへの懸念は、南アフリカ(56%)で最も高く、ドイツ(15%)で最も低くなっています。。
- とはいえ、パンデミックにはプラスの効果があると考える人もいます。5人に1人(世界各国平均は19%)が、デジタルコミュニケーションスキルの向上が、コロナ禍による子どもや若者への長期的な影響になると考えており、シンガポールでは5人に2人が37%となっています。
調査対象29カ国の平均では、ほとんどの人が、ウイルスの蔓延を抑えるために学校閉鎖は許容できるまたは許容できた代償だと考えている
- 世界各国の平均では、約10人に6人(62%)が、コロナウイルスの蔓延を抑えるためには学校閉鎖は許容できる代償であると考えていますが、国によって大きな違いがあります。メキシコ(81%)、ペルー(81%)、コロンビア(80%)では学校閉鎖を最も受け入れており、イタリア(42%)、日本(41%)、韓国(33%)では最も受け入れていません。教育水準の高い人々は、特に学校閉鎖を支持しています(世界各国平均で66%が学校閉鎖を容認しています)。
制服、書籍、交通費などの教育関連費用を必要としている家庭への支援は、教育へのアクセスを向上させるために最も重要であると認識されており、次いで高速インターネットアクセスの増加とIT機器の提供が挙げられている
コロナウイルスのパンデミック後に子どもと若者の教育へのアクセスを改善するために最も重要と思われる行動を、3つまで選択するよう、調査対象者に依頼しました。
- 制服、書籍、交通費などの教育関連費用を必要としている家庭への支援は、教育へのアクセスを向上させるための行動として、最も多く挙げられています(世界各国の平均では41%が言及)。教育関連費用の支援は、メキシコ(59%の人が最も重要な行動として挙げている)、ロシア(59%)、コロンビア(56%)、南アフリカ(54%)の人々にとって特に重要です。
- デジタル化とオンライン学習に関連するアクションも、教育へのアクセスを向上させるための鍵となると考えられています。29カ国の平均では、10人に4人が「すべての人が高速インターネットに接続できるようにする」(37%)、「コンピュータ、ノートパソコン、タブレット端末に資金を提供する」(36%)を最も重要な行動として挙げています。一方で、子どもたちにデジタル技術の使い方を教えることの重要性は低く「デジタル技術を向上させるためのITトレーニングプログラムへの資金提供」を挙げた国は世界平均で26%にとどまりました。
- 高速インターネット接続へのアクセスは、マレーシア(66%)、ペルー(59%)、チリ(55%)で最も多く挙げられており、コンピュータ、ラップトップ、タブレット端末への資金提供は、トルコ(56%)、マレーシア(55%)、ハンガリー(52%)で最も多く挙げられています。スウェーデンでは、どちらかが最も重要であると考える人が最も少なく(それぞれ13%、17%)、これは既存の高いインターネット普及率を反映していると考えられます。1
公共支出の優先順位ー競合する項目が多く初等・中等教育への支出を優先的に考えているのは約4分の1(世界各国の平均は27%)に過ぎない
コロナウイルスのパンデミック後に公共支出の優先分野とすべきだと思う分野を、3つまで挙げるよう調査対象者に依頼しました。
- 調査対象のほぼすべての国で、人々は公衆衛生への支出を他のどの選択肢よりも最優先事項と見なしています(世界各国の平均値は58%)。第2位は社会保障と経済的支援で、29カ国平均で10人に4人(40%)が公共支出の優先分野として挙げており、第3位は初等・中等教育です(世界各国平均では27%)。
- マレーシア(38%対16%)、トルコ(37%対27%)、中国(30%対25%)、イタリア(31%対24%)、日本(28%対10%)では、企業に対する経済的支援が初等・中等教育よりも上位にあり、南アフリカ(42%対24%)、シンガポール(34%対8%)、オーストラリア(30%対15%)、インド(29%対24%)、韓国(29%対14%)では、雇用力を高めるための政府の研修プログラムが初等・中等教育よりも上位にあります。
- 29カ国の平均では、高等教育や職業訓練を公共支出の優先分野と見なしているのはわずか15%です。職業訓練は、どの国でもトップ3に入っていません。インターネットへのアクセスを改善することは、教育へのアクセスを改善するために重要であると認識しているにもかかわらず、優先事項として見ている人はほとんどいません(世界各国の平均は15%)。
- 人々は、政府が海外への支出よりも国内への支出を優先することを望んでいます。海外での開発や海外援助への支出を優先させるべきだと考える人は、29カ国平均でわずか4%。高所得のG8諸国では、同様の割合(平均でわずか4%)が、自国政府に海外開発・海外援助への支出を優先させることを望んでいます。
(1) https://www.government.se/496173/contentassets/afe9f1cfeaac4e39abcdd3b82d9bee5d/sweden-completely-connected-by-2025-eng.pdf