グローバル 医療サービス モニター 2021

イプソスが世界30カ国で実施した調査によると、医療サービスに対する市民の認識は、パンデミックの影響を受けていないことがわかりました。人々は、コロナウイルスが自国で直面している主な健康問題であると考え続けていますが、一方でメンタルヘルスに関する懸念も高まっています。

イプソス グローバル ヘルスサービスモニターは、今日の人々が直面している最大の健康上の課題と、その課題に取り組むために自国の医療サービスがどの程度整備されていると人々が考えているかを調査する年次調査です。2021年8月30日から9月3日にかけて、世界30カ国で調査を実施しました。

主な調査結果は次のとおりです。

  • コロナウイルスは、世界の人々が直面している最大の健康問題であることに変わりはありません(全30カ国で70%の人が選択し、昨年の72%からわずかに減少しました)。
  • 2021年の健康に関する重要な関心事として、「がん」を挙げた人は昨年の37%から減少し、34%でした。一方、「メンタルヘルス」については、5ポイント上昇して31%となり、「がん」にわずか3ポイント差となりました。
  • ここ数年、医療サービスにとって厳しい状況が続いていますが、市民の認識は全体的に良好で、53%が自国の医療サービスを肯定的に評価し、51%が最良の治療を受けられると信じています。
  • 一方、世界の過半数(56%)は、自国の医療システムが限界超えであると回答しています。また、医療サービスの主な課題は、治療へのアクセスや待ち時間(41%)、次いでスタッフ不足(39%)となっています。

医療サービスの評価

世界全体では、平均して53%が自国の医療サービスを肯定的に評価しています。これは、2020年(50%)以降やや増加し、2018年の水準(45%)を大きく上回っています。

新たに調査対象に加わったシンガポールは、医療の質について最も満足しています(79%が「良い」または「非常に良い」と回答)。これに次ぐのが、こちらも今回新たに調査対象となったスイスと、昨年この分野でトップだったオーストラリアで、いずれも78%に達しています。

下の図に示すように、評価は国によって大きく異なります。

2020年以降、医療の質の認識が最も低下したのは、カナダ(-8ポイント)、英国(-6)、ドイツ(-6)、ハンガリー(-5)。一方、アルゼンチン(+9ポイント)、スペイン(+8)、ロシア(+7)、ベルギー(+6)では上昇しました。

今後の見通しについては、世界の調査対象者の34%が、自国の医療サービスは今後数年間で改善すると考えている一方、16%は悪化すると予想しています。特に先進国では悲観的な見方をする人が多いようです。

今年のモニターでは、70%の人が「コロナウイルスは今日の重要な健康問題である」と回答しており、昨年の同時期(72%)に比べてごくわずかに減少しています。調査対象となった30カ国のうち、25カ国でコロナウイルスが第1位の健康問題とされており、マレーシア(93%)、ペルー(90%)、日本(85%)、メキシコ(同じく85%)、ブラジル(84%)が最も高いスコアを記録しています。

昨年と比較して、コロナウイルスを健康上の最大の関心事とする割合が最も増加したのは南アフリカ(+20)、日本(+11)、オーストラリア(+10)、メキシコ(+7)。最も減少したのは、チリ(-17)、ポーランド(-17)、ハンガリー(-14)、中国(-12)、ベルギー(-11)、オランダ(同じく-11)でした。

メンタルヘルスは、2021年に世界の人々の間で最も注目度が高まっている健康問題です。

昨年との比較では、スペイン(+19)、ベルギー(+13)、ブラジル(+13)、マレーシア(+11)、チリ(+9)、イタリア(+9)で最も増加し、減少したのは4カ国(トルコ、日本、英国、インド)のみでした。

メンタルヘルスに関する世界の見解については、 世界メンタルヘルスデー 2021 のレポートで詳しく紹介しています。

ヘルスケア分野の課題

国民が医療制度の問題のうち、最も改善が必要だと考えているものは、引き続き「治療の受けやすさ・待ち時間」(41%)と「スタッフの不足」(39%)で、10人に4人がこの2つを選択しています。次いで、コスト(31%)、官僚主義(26%)、予防医療への投資不足(23%)、人口の高齢化(21%)となっています。

今回の調査では、このような課題について、他の質問で詳しく説明しています。世界平均では、60%の調査対象者が、自分の国では医師の予約を取るまでの待ち時間が長すぎると答えています。地元での診療予約に関しては、より多様な経験があるようで、平均的には48%が簡単だと感じていますが、28%はそう思わないと答えています。

治療の受けやすさ・待ち時間について最も懸念している国:

  1. ポーランド (68%)
  2. ハンガリー (61%)
  3. チリ (61%)
  4. メキシコ (55%)
  5. イタリア (55%)

スタッフの不足を最も懸念している国:

  1. スウェーデン (71%)
  2. オランダ (66%)
  3. フランス (63%)
  4. カナダ (61%)
  5. = ドイツ (58%)
    = ハンガリー (58%)

治療費を最も懸念している国:

  1. チリ (58%)
  2. 米国 (52%)
  3. シンガポール (49%)
  4. ロシア (45%)
  5. インド (44%)

全体のトップ3以外では、中国、韓国、シンガポールでは人口の高齢化が第一の課題となっています。アルゼンチンとブラジルの市民は、投資の不足を最も懸念しています。最後に、ロシアと南アフリカでは、治療の質の低さが最大の問題となっていることがわかります。

医療サービスに関する様々な市民の意識については、フルレポートをご覧ください。

これは、イプソスがGlobal Advisorオンラインプラットフォームで実施した30市場の調査結果です。2021年8月20日(金)~9月3日(金)に、米国、カナダ、イスラエル、マレーシア、南アフリカ、トルコの18歳~74歳、シンガポールの21歳~74歳、その他の24市場の16歳~74歳の合計21,513人の成人にインタビューを実施しました。
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